なるほど!【屋根カバー工法】のポイントと施工手順をご紹介します。
一般戸建て住宅の屋根にはたくさんカラーベストが使われています。コロニアルと呼ぶ方もいらっしゃいます。屋根塗装が可能な場合もありますが劣化状況が酷いと葺き替えもしくは屋根カバー工法という工事が有効になります。
このページでは、屋根カバー工法がどのようなものかをご紹介しつつ、屋根カバー工法のメリット・デメリットを紹介しています。はじめて屋根カバー工法の選択を検討されている方向けに、施工実績4000件超の専門店としての経験を活かし、丁寧にわかりやすく書きましたので是非お役立て下さい。
屋根カバー工法とは?
1,どのような工事?
屋根は、ルーフィングという防水シートを下に敷くことで雨漏りを防いでいます。
屋根自体の劣化が少なくとも、25年程経過すると、このルーフィングが傷みだし、雨漏りを引き起こす原因となるのです。
屋根カバー工法とは、簡単にいうと、現状の屋根材の上から新しい屋根をかぶせる(カバーする)工法のことです。既存の屋根の上にルーフィング(防水紙)を貼り、その上に軽い金属の屋根を張ります。
塗装よりも長持ちし、既存の屋根の解体や処分する手間がかからないので、葺き替えよりもコストを安くできる上、廃材も少ないエコな工法です。
屋根カバー工法に使用される材料は大きく分けて2種類あります。
1つ目は、スーパーガルテクトや横暖ルーフなどに代表される平滑な横葺き平板金属屋根。もう1つは、テクスチャーが瓦に近い形状で表面に石材チップが吹き付けられているセネターなどがあります。
いずれも新築時にも使用されることのある材料で、一つ目の平板金属屋根材は主にカラーベストやコロニアルと呼ばれるスレート系屋根材の上に被せる場合が殆どです。横葺き平板金属屋根は断熱材が裏面に取り付けられており、仕上がりもスレート屋根と近い外観に仕上がります。
一方、石材チップが吹き付けられているタイプは、凹凸がでますので高級な雰囲気があります。
2,葺き替え工事との違い
葺き替え工事の場合、既存の屋根材を撤去して、新しい屋根材を葺くので廃材処理費や手間なども増えコスト高になります。また、既存屋根材にアスベストが含まれている物の場合、廃材処理費が非常に高額となるため更にコスト高になります。
屋根カバーの場合はその撤去費用や廃材処分費を必要としないため、葺き替えと比較して安価にかつ工期を短くリフォームをすることが可能となっています。
3,主要なメーカー、商品
IG工業のスーパーガルテクトやニチハの横暖ルーフなどの断熱材付き平板金属屋根や、石材チップ系ではデクラ社のセネターが使われることが多いようです。業者様に見積もりを取るとこれらの商品が使われることが多く、実際人気のある商品と言えます。
屋根カバー工法のメリット
屋根カバー工法を検討する上で気になるのは、この屋根カバー工法のメリットとデメリットです。
まずは、屋根カバー工法のメリットを見てみましょう。
メリット1:断熱性・遮音性・防水性が向上する
屋根カバー工法に使われる屋根材には断熱材が取り付けられていたり既存屋根との間に通気層が形成されることによって断熱性能が向上します。特に夏場の2階の暑さに対する効果が大きいですね。
また金属屋根材をかぶせる前に既存屋根の上にルーフィング(防水紙)を張りますので雨漏れ防止効果も非常に高いことが挙げられます。
屋根が2重構造となるため雨音の軽減も期待できます。特に石材チップ系の金属屋根材は表面に加工がされているためその効果が顕著です。
メリット2:リフォーム費用が安い
先述した通り葺き替え工事と比較して安価に施工が可能な点に加え、金属屋根材はガルバリウム鋼板と言って基本的には錆びない材料で作られている上に焼付塗装や石材チップが施されているため、屋根塗装と比較して圧倒的に長持ちします。
ライフサイクルコストとして考えても屋根塗装より、トータルコストを下げられる場合が多々あります。
メリット3:工期が短い
葺き替え工事に伴う撤去作業や廃材処分が屋根カバーには必要ない為、工事期間を短縮することが可能です。概ね葺き替え工事の半分くらいの工期で施工可能です。
屋根カバー工法における工事期間は屋根形状や大きさによりますが、概ね実働で7日前後です。
メリット4:騒音やホコリのトラブルが少ない
葺き替え工事の場合は撤去時にホコリや騒音も発生する上に産業廃棄物用のコンテナやダンプカーを設置する必要があります。そのため、工事が大掛かりとなり騒音やトラブルの発生につながるケースも見られます。
その点、屋根カバー工法はその必要がありませんのでトラブルも少なくなります。
メリット5:アスベストにも対応できる
2004年以前に建てられた物件でスレート系屋根材が使われている場合、まず間違いなくアスベストが含まれています。アスベスト含有の屋根材を撤去する場合は厳格な管理が必要となり、専用処分となるため手間と費用が掛かります。しかし、屋根カバー工法の場合であればそのような手続きや管理は必要なく、アスベストを含んだ屋根材の上に被せることが可能です。
以上が屋根カバー工法におけるメリットになります。次はデメリットも見てみましょう。
屋根カバー工法のデメリット
デメリット1:耐震性に影響する可能性がある?
屋根カバー工法をすることで新しく被せる金属屋根材分は屋根が重くなります。
金属というとかなり重たいイメージを持たれるかもしれませんが、0.3~0.4mm厚のガルバリウム鋼板は非常に軽いことと、平面荷重で屋根全体に重みが分散しますので耐震強度にはそれほど影響はありません。
実際に、新築時の屋根の耐荷重計算には積雪も考慮されていますので豪雪地帯以外では問題ないのが実情です。
重さが気になる方は実物のカットサンプルを一度手に取ってみるとその軽さをご理解いただけると思います。
デメリット2:瓦屋根には、ほぼ対応できない
原則としてスレート系屋根材の上に被せる工法の為、日本瓦、洋瓦などの陶器瓦や新築時に既に金属系屋根材が使われている場合は屋根カバー工法は施工不可となり、葺き替えが必要となります。
屋根を軽くすることで、住宅の耐震性能は向上します。そのため、あえて陶器瓦から屋根カバー工法で使用する金属屋根に、自宅の屋根を交換する場合もあります。地震に対するリスク軽減を考えている方には有効な選択肢になります。
デメリット3:内部の補修が必要な屋根には施工できない
既存屋根がすでに雨漏りして年月が経過していると屋根下地材の張替えや補修が必要となります。そのため、目視で屋根が沈んでいたり屋根にあがった際フワフワするようなケースでは、そのままの状態での屋根カバー工法をお勧めできません。
屋根カバー工法を施工するためには、傷んだ下地を部分的にでも撤去して補修、交換、補強等をすることが必要です。
屋根カバー工法ができない屋根は?
このようにデメリットよりメリットの方が大きい屋根カバー工法による施工ですが、屋根カバー工法ができない屋根は存在します。とても大事なポイントになりますので、屋根カバー工法を検討されている方はここを是非覚えておいて下さい。
陶器瓦やセメント瓦等が使用されているケースでは屋根カバーは基本的に不可となり葺き替え工事が必要となります。
また、雨漏れなどが原因で屋根下地材が腐食していたり脆弱な部分が大きいと屋根カバーは適していません。片流れ屋根などに多く用いられている縦葺きの金属屋根にも屋根カバーは施工不可となります。
この点は、十分に屋根の施工実績がある専門家に診断を依頼し、自宅に屋根カバー工法が適しているかどうかを調べてもらった方が良いでしょう。
屋根カバー工法の費用目安
さて、では屋根カバー工法にかかる価格はどのくらいになるのでしょうか?
断熱材付きの平板金属屋根材も石材チップ系の屋根材も、概ね¥10.000~¥12.000/㎡が費用相場となります。ただし、昨今の物価高で高騰する可能性はありますので、あくまで目安の値段としてお考え下さい。一般的な戸建て住宅の場合(35坪~40坪)の場合屋根面積が概ね100㎡前後となりますので、100万円から120万円ほどとお考えいただければよいと思います。
※使用する屋根カバー材によって多少前後します。
ご自宅の屋根平米数に上記を掛ければ概算費用が把握できます。
これに伴って必須工事となるのが仮設足場です。その費用は建物の大きさにもよりますが40坪前後の2階建ての建物であれば18万円~25万円くらいが費用目安です。
もしすでにお見積書を取られている方はお手元の作業単価と見比べて見て下さい。補足ですが。仮設足場費用はけして安価なものではないため、必要な外壁屋根工事は一度に済ませておいた方が長い目で見るとコストは少なくて済みます。外壁修理や外壁塗装も同時施工されると費用対効果は上がります。
屋根カバー工法の施工手順と行う際のポイント
最後に、屋根カバー工法の施工工程をご紹介します。こちらは弊社で対応させて頂いた屋根リフォーム現場の施工事例の一つになります。
施工前です。 | 施工前の劣化具合です。 |
築24.25年ということでスレート屋根も入念にチェックを行いました。スレート屋根の主原料は吸水性の高いセメントと、石綿(含まれていないものもあります。)です。つまり、表面の塗膜が劣化してくると雨水が屋根材自体に染み込んでしまうのです。
雨水が染み込むと、コケが生えてきます。「コケだけなら」と思う方も多いのですが、屋根材自体の割れや下地の反りなどを誘発し、そこから雨漏れ...なんてことも。
しかも、築25年~築30年ほどで防水紙自体が傷んでしまって雨漏れしてしまうケースが多いのです。幸い、まだ雨漏れはないとのことですが、これからが一番心配な時期なので既存の屋根材にそのまま金属屋根を被せる「カバー工法」をご提案いたしました。
まずは、棟を撤去。 | 平棟を外したところです。 |
板も外していきます。 | 撤去完了です。 |
続いて、防水紙に取り掛かります。
一枚目の防水紙の位置の印をつけていきます。 | 防水紙を取り付けていきます。 |
赤丸の部分は間を開けなければいけません。こちらにはスターターと言われるものを取り付けるのですが、軒先に間を開けずに上からスターターを取り付けると、金属屋根と防水紙の間に雨水が入ってしまう可能性があるためです。この隙間に雨水が侵入すると出る場所がなくなるため防水紙が傷んでしまうからです。
金属屋根は元々雨水が入らない構造になっていますが、万が一入ってしまったら、ということまで考えられています。
こちらがスターターを付けるときの見本です。 | 防水紙の取り付け完了です。 |
いよいよ金属屋根の施工になります。最初に谷棟、隅棟を取り付けていきます。
谷棟です。 | 隅棟です。 |
棟の重なる部分は金切はさみで加工していきます。こういった部位は慎重に手作業で行っていきます。
金切はさみで加工しています。 | 加工完了です。 |
その後、平の部分を取り付けていきます。金属屋根は上下をひっかけるように葺いていくことで雨水が入らないようにしています。
一枚一枚合わせていきます。 | 隅の部分はサイズを測ります。 |
その場で加工します。 | 一面完成です。 |
このようにしてすべての面を施工していきます。
こちらが施工前・完工後の比較画像となっています。
施工前です。 | 完工後です。 |
施工前と完工後を比べていただくと一目見ただけで見た目の違いがお分かりいただけます。ただ、屋根カバー工法は見た目だけでなく、断熱機能・防水機能にも優れている工法なのです。金属製の瓦を葺くだけで十分な機能を期待できますが、更に既存屋根材の上から被せているため、金属製の瓦単品以上の効果が期待できるのです。屋根のカバー工法は、既存屋根材が腐る前でないと施工が出来ません。既存屋根材が腐ってしまっては「葺き替え」という道しか残されていません。
「まだ大丈夫だろう」と思っていらっしゃるお客様、屋根カバー工法での施工を具体的にお考えの方は、一度お声がけ頂ければ力になれるかと思います。ご相談は無料ですので、是非ご利用下さい。
屋根カバー工法 ー施工事例ー
岡崎市にお住いの方から屋根塗装を行いたいとのことで、問い合わせをいただいたので伺いました。
調査に伺うと、築30年ほどでのスレート屋根のお宅でした。
色々お話を聞いていると最後のメンテナンスにしたいのと雨漏れしないか心配とのことでした。
なので、今回は屋根塗装ではなく屋根カバー工法を行わせていただきました。
屋根塗装に防水効果はないので雨漏れせず最後のメンテナンスにしたい場合は、屋根カバーの方がおすすめです。
施工前 |
最初に既存の棟板金などを撤去します。次に新しい防水紙を敷いていきます。防水紙の寿命が30年程と言われているため築30年を過ぎると雨漏れする可能性がかなり高くなってきます。
既設撤去 |
既設撤去 |
その後、IG工業のスーパーガルテクトを順番に貼っていき完成となります。
ルーフィングです。 |
ルーフィングです。 |
屋根本体施工です。 |
完了です。 |
屋根塗装=防水効果があると考えてしまいますが実は塗装に防水効果はありません。屋根塗装の一番の目的は美観の向上です。目的に合わしてメンテナンスをすることをお勧めいたします。今回は最後のメンテナンスにしたいのと雨漏れしないか心配されていたので屋根カバー工法を行わせていただきました。
ソーラーパネル脱着の手順
屋根にソーラーパネルが施工されているカラーベストの屋根カバー工法(ガルバニウム鋼板)について紹介していきます。
ソーラーパネルの配線処理をしてから脱着をして、再び敗戦処理をします。復旧の際には新たな太陽光パネルの架台を取り付ける必要があります。
以下ははIG工業のスーパーガルテクトのケースを紹介します。
上記の写真は施工前写真です。
ソーラーパネルの位置などほぼ変わりなく仕上がります。
上記の写真はソーラーパネル外しです。
今あるソーラーパネルを一度外し屋根材の上にカバー工法で施工します
上記写真がカバー工法の施工後です。 屋根カバー工法につきましては上記記事にて詳細が載っております。
上記写真はソーラーパネル取り付けになります。
専用の取り付け金具を施工します。
この金具によって屋根材に穴をあけることなくソーラーパネルを固定することができます。
完了写真です。 |
雨漏りが心配だけどソーラーパネルが施工されておりメンテナンス方法をお考えの方は是非、参考にしてください。